いつの間にかアパートに帰ってきていた和己に、寝込みを襲われてから、ベッド上でこんな攻防を延々と続けていた。凄く馬鹿らしい。ちなみに何故和己を拒否し続けているかというと、やる気満々で鼻息が若干荒いのが実は嫌だった。引いてしまうのだ。しかし和己は中々諦めない。先程から随分時間が経過しているというのに、勢い衰えず、未だオレを組み敷こうと粘っていた。最後には情けない声で名前を呼んで、追い縋ってくる始末だ。我が恋人ながら物凄く可愛そうな人間に思えてくる。なのに和己に隙を付かれて優しいキスをされた途端、ついぐらりと理性が揺らぎそうになる自分がそこに居た。別に良いんじゃないか、なんてあっさりとそちらへ思考が傾いてしまって、自らの単純ぶりに泣けてきそうだった。
「慎吾」
名前を呼ばれて、顔を両手で覆われて、額にキスを落とされる。ゆっくり丹念に唇にキスをされる。もうこの時点で八十パーセント落とされかかっていた。こいつ簡単だな、なんて思われてやしないだろうかと思い、和己の顔を見上げると、そこには予想外に真剣な顔があって、逆に少したじろいでしまった。