そうしてその後は和己の思い通り事が進んでしまったのだが、もはや何の不満も残っていなかった。終わった後は、シャワーを浴びる前に暫し、和己に寄り添ってそのままでいる。その時間がとても好きだった。程よい疲労感が休息を求めて動くなと命じているし、ついでに眠気も呼んでくる。心地よい布団の温もりと、和己の体温がこの場を離れるなと言っている。だが二十分もすると和己に起こされ、仕方なくシャワーを浴びる。そして身体を洗った後に部屋着を着、再びベッドへ戻る。その頃にはもう眠気は飛んでいるが、和己に寄り添うようにして、横になったまま惰性に時を過ごす。
「夜さ、何食べる?」
時刻はまだ五時を回った頃だった。和己はう〜んと考え込んでから、オムライスと言った。材料が揃っていたかどうかを思い起こして、大丈夫だと告げる。だがオムライスだけでは栄養的に足りないので、野菜スープもつける事にした。
 和己と同居するに当たって、オレは一冊のレシピ本を買った。アスリート向けの身体を作っていく為に、栄養バランスの取れたメニューが網羅されている、分厚いレシピ集だ。。”スポーツ選手の完全食事メニュー”というタイトルで、これを頼りにこれまでずっと夕飯を作ってきた。メニューは実に四百種類が掲載されていて、今では付箋が沢山付いている。和己は何となく、オレは料理が得意らしいという事実を知ってはいても、そんな本を活用しているなんて事は全然知らないだろう。
現在書いている、同居話2の序盤になります。