「(…!メール…準太から、か。いよいよってわけか)」



「和さん、すみません。休みの日に呼び出して」
「いや良いんだ」
(あぁ…まるで特攻兵みたいな気分だ。お前はあの時、時間をくださいなんて言わなきゃ良かったんだ。そしたら半端な期待を持つこともなく、静かに終わらせられたかもしれないのに。突然あんな事言われて混乱してたのか?でも、返事する権利があるなんていわれたら、確率が1%でもその1%に縋っちまう。お前は何て言うつもりなんだ?想像するのも怖いが、『和さんオレ…和さんはオレにとって、大事な尊敬する先輩です』とか、遠まわしなフリが来たりするのか)

「和さん」
「…」
「和さんは、オレにとって大事で尊敬する先輩です」
「うっ…(うわああぁぁぁあ!やめてくれ!何もこんな推測がドンピシャで当たらなくても良いだろ!)」
「和さん?」
「あ…う、ナンデモ無い」
「だからオレ…ずっと和さんと組みたいと思ってました。それってつまり、桐青のエースにならなきゃならなかったんですけど。すっげぇ道のり長かったっすけど。正直、高校入ってからはマジでダメかもとか思ったこともありましたけど。今オレ、エースです。んで、和さんに捕って貰ってます。オレがどんだけ嬉しいか分りますか?」
「…お前じゃないから正確には分らないけど、でも、オレもお前の投球が冴えてくのが、実力つけてくのが分って、それを捕れるのは嬉しいよ」
「そっすか。へへ」
「でも、暫く和さんがオレから距離を置くみたいになって、オレ、スゲェ寂しかったです。寂しいっつうか、どんどん不安になって。もし和さんに嫌われてたらって」
「…ゴメンな」
「でも最近は割と普段どおりに接してくれるようになったので、いいです。良いんですけど…」
「けど?」
「何かまだちょっと物足りない感じがするんで、もっと構ってくれますか」
「そうは言っても、(今の状態でもオレには一杯一杯なんだ)…オレはお前が好きだって言っただろ?そんな相手に何事もないみたいに構う事なんて…ちょっとまだ出来ないよ」
「なら、どうすれば良いですか。つうかオレってもしかして和さんの事好きなのかもしれないです。和さんは、どう思いますか?」
「どう、思うって…。オレには分らないよ。お前の気持ちなんて」
「オレは、好きなんじゃないかなって実は思うようになりました」
「でも、お前のは、こうなんていうか、違う気がするよ。勘違いと言うか…オレに投げられるようになって嬉しいって言っただろ。それで、オレがお前を好きだなんていったもんだから、お前は混同しちまったんじゃないか?」
「何でッスか?」
「…お前の気持ちは分からないでもないよ。オレにも憧れてる先輩とかいたし。その人に認めてもらいたいとか思ったよ。マジでカッコイイなって、その人に追いつきたいって」
「ソレって誰すか。呂佳さんですか」
「いやまぁ…呂佳さんもそうだけど」
「何か和さんて事ある事に呂佳さんの名前出しますよね。なんなんすか」
「何って…そんなつもりは無いけど」
「だってこの前だって、こういう場面だったら呂佳さんどうするだろうなとか言ってたじゃないスか!」
「…準太、呂佳さんは今関係ないだろ?」
「あります。オレにはあります。何かこう、前からひっかかってたっつーか。この際聞いときたいなって」
「聞くも何も、尊敬する先輩だよ。それ以外に何があるんだよ」
「いや、和さんには何か、呂佳さんを特別視してるフシがあるっす。何かムカつきます」
「おいおい…何なんだよ。つうかどんどん話がズレてないか?」
「嫌なんです。オレはやっぱ和さんにとって特別な選手でいたいんです。だから呂佳さんにも負けたくないんです。それこそ呂佳さんの存在を追い抜くぐらいの勢いで」
「…あのな、先輩ってのは自分にとっていつまでも頭の上がらない、尊敬できる存在だよ。それを変えるってのは無理だよ。そんなもん求めるな」
「嫌です。ヤなんです。オレが特別だって言ってください。オレは和さんが特別です。だから和さんも特別だって言ってください!」
「(何か駄々っ子みたいになってないか?)お前は確かに特別だよ。でも、オレにどうしろってんだ。先輩を忘れろとでも言いたいのか?一体オレに何を求めてんだよ」
「和さんです。和さんを丸ごと下さい。つうかぶっちゃけオレと付き合ってください。んで、オレが一番だって言ってください。オレだけが特別だって」
「おいおい…訳分らないよ準太。やっぱり混同してるし、そもそもお前、今ちょっと混乱してるんだ。落ち着け(つうか何でこんな事になったんだ?オレはお前に振られるものと思ってきたのに、何で付き合ってくださいとか言われた挙句それを落ち着けとかって宥めてるんだ。オレもそろそろ訳が分らなくなってきた)」
「……」
「……」
「……」
「準太、やっぱ、まだちょっと話するのは早かっ」
「和さん!」
「…何だ?」
「ちょっとベンチに座って落ち着いて話しませんか」
「ああ…良いよ」


「なんか、ちょっと寒くなってきたな。日が落ちるのも早くなってきたし。…準太?」



「和さん…」
「え…おい……っ!」



「何、するんだ…っ」
「キスです」
「そういう事じゃなくて!」
「何か和さんが信じてくれないみたいなんで、実力行使というか、証拠を見せようと思って。つか顔赤いっすよ」
「うるさい…!お前な!」
「立ったままだと身長差的に辛いんで、座ってもらいました」
「……!」
「どっすか。つかこう、オレが好きならムラムラっと来たりとかしませんでしたか?」
「……」

「何か…和さん、ホントにオレの事好きなんすか?オレが色々言ったりやったりしても、喜ぶどころか否定的だし。オレの言う事信じてくれないし。もしかして、その気になって和さんの言葉真に受けたオレが馬鹿だったんスか?」
「!そんな訳ないだろう!オレがどんな気持ちでお前に接してきたと思ってるんだ。どんだけ辛かったと思って」
「じゃあ、素直にオレの気持ち受け取ってください」
「…準太」
「……」
「お前が、好きだよ。本当に好きだ」
「……へへ。やべ、嬉しいっす」
「でも、それとこれとは別だ」
「は?何なんすか!往生際悪いっすよ和さん!」
「往生際が悪いとかそういう問題じゃない!お前の好きはオレの好きとは違うって言ってんだ!」
「同じッスよ!」
「違う!」
「ぅ〜〜〜…和さんなんかキライだ」
「え、おい、準太!」
私が一番訳分らなくなってきました。どうなる(−□−)
というか、和準ですので!逆ではありませんので〜 10/3