「はぁっ、はぁっ、は…何、やってんだ、オレ、は」

(あんな顔の準太を置き去りにして)

(でも、あのままあの場にいたら、思い切り抱きしめちまいそうだった)

(いや、そんなの…。結局、準太の前で平常どおりに振舞う為に、準太を遠ざけて、結果あんな顔をさせるに至っちまたって事だ。逆効果も甚だしい)

(大事な後輩に)

(大事な準太に)

(もう潮時だったんだ。あいつに言ってやらないといけない。お前が気にする事は何もないんだって。オレが、全部一人でグルグルしてお前を勝手に巻き込んじまってたんだって)





「和さん、話があるって…」
「うん、ごめんな。朝早くから。でもお前と2人で話したかったから」
「…どんな話です、か?」
(あぁ、そんな不安そうな顔をするな)
「昨日、ゴメンな。いきなり帰っちまって。答えも返さないで」
「…いいんス」

「あのな準太、オレはお前が好きなんだ」
「…?」
「それでな、お前を意識しちまって、意識しすぎてヤバイと思ったから、どうすればいいかと思ったんだ」
「…あの」
「慎吾には色々相談してたんだけど、結局愚痴りまくった挙句に迷惑かけただけで終わったけどな。結局、お前から少し離れてみたりとか、そんな行動しか取れなくて」
「…」
「情けないよな」
「っ和さん!」
「ん?」
「あの、それって。オレを意識するって」
「お前が好きなんだ。凄い好きなんだ。お前を独り占めして、誰にも渡したくないぐらい、お前の気持ちを全部オレのものにしたいって思うぐらい、好きなんだ」
「…!!」
「ゴメンな。びっくりしただろ。お前から拒否されたらと思うと怖くて、凄ェ怖くて、今まで言わなかったし言えるわけもなかったけど。でも、ひたすらあれこれ考えた挙句、昨日のお前の顔を見たら、単にオレが振られれば問題は解決なんだって気付いた。オレに懐いてくれてたのに、お前と良いバッテリーを組めそうなのに、ぶち壊しちまうんじゃないかとかそんなこともたくさん考えたけど、結局一番怖かったのは、お前に拒否される事だったんだ。だから言えなかった。でも、このままじゃどんどん良くない方向に進むところだったもんな。オレがさっさと言うべきだったんだ。…ごめんな準太」
「和さん、オレ…」
「準太、何か言う必要は無いよ。お前を困らせてるもんな」
「あの…」
「…お前が何か気にする必要はない。オレは、これからもお前と良いチームメイトで、バッテリーでいたいと思ってる。その為に言ったんだ。今日の練習からまた普段通りに…ってのはいきなり無理かもしれないけど、少しずつまた、上手く行くように努力したい。だから…」
「和さん」
「何だ?」
「何でオレに何も言わせてくれないんスか。勝手に自己完結してるじゃないですか」



「…すまん。何か言いたい事があったなら、言ってくれ」
「和さんは、オレが好きですか?」
「…っ…そうだよ」
「じゃあ、オレにその返事を言う権利、あるじゃないですか」
「…(怖いんだ。この期に及んでまだ。お前にハッキリ言われたくなかった)」
「それにオレ、いきなり言われて驚いてるので、色々考える時間も下さい」
「…分った」
「部活は今まで通りにって所は賛成です。今まで通りにオレに接して欲しいんです。慎吾さんにばっかり構ける以前の和さんでお願いします」
「あ…あぁ、うん」
「じゃ、オレ、行きます」
「あぁ…」





「ギャハハハハ!何お前それ、完全に準太に押されてんじゃん!いや〜アイツは旦那を尻に敷くタイプだよ。あ、逆か。アイツが亭主だから関白宣言タイプか。あっはっはっはっは!あ〜〜腹痛ぇ」
「うるせぇ…!!」
「お前もオレが知らない間に、何でそんな面白い事になってんの。えっと、まず最初は、二人きりになっちまって押さえがきかなくなりそうになって準太から逃亡?ぶはっ、超ウケる!お前の自制心はどんだけ弱いんだよ」
「違う!こう、不安げに弱々しげに見上げてきたんだよ。上目遣いだよクソ。しかもオレが原因だよ。好きなヤツにそんな顔されたら思わず…ってなるだろーが」
「へぇ〜そんな顔したのか準太のヤツ。相当効いてたんだな。そりゃオレに向ける顔も怖くなるって話だよな」
「自分がもう巻き込まれないとなったら、急に他人事だな」
「だって他人事だろ。寧ろオレが巻き込まれてたのが納得行かねぇ。お前の愚痴聞いてやるとは言ったけど、準太に睨まれる筋合いねーもん」
「あぁ…まぁそうだけどよ」
「で、後は準太の返事待ちか」
「返事も何も、オレは考えるまでもねぇと思うんだよ。だってありえねぇだろ」
「出たよ。後ろ向き思考。あのさ〜、考えるまでも無いんだったら返事待ってくれとか言わねぇだろ」
「…」
「アイツは考えたいと思ったんだよ。だったら考えさせてやりゃ良いだろ。その結果例え振られたとしても、仕方ない事なんだから。お前にとってはしんどいだろうけどな」
「そうだな。やっぱり、どうしても正直怖いけどな」
「…分るけど。ここまで来たらもう、あと少しだろ。頑張れ」
「おう」
今更ですが、慎吾が出張りすぎですよね。分ってます。でも会話文だけだと、和さんとの会話に使いやすいんです…!単に慎吾ブームが来てるだけかもしれませんが。
そして今回はイラスト無しで。なんか出来上がるのを待ってるといつまで経っても更新できない気がしたので…(−−; 9/26
イラスト追加しときました。 9/30