「あの、和さん」
「ん?」
「オレの球、良くないっスか?」
「え」
「さっきから、何か…苦い顔してるから」
「(何やってんだオレは)いや違うよ、ゴメンな準太。球、良いよ。最近伸びてきてるしな。この調子で頑張れ」
「そっすか」
「おう!」


「(今日、和さん、一緒に帰れねぇかな…)」
「慎吾!」
「ん〜?」
「一緒に帰らねぇか?あと少しで部誌、書き終わるから」
「良いけど。何か話?」
「あぁ」
「(…慎吾さんと帰るんだ。ちぇ)」

「で?どうしたよ」
「今日オレ、準太の前で苦い顔で球受けてたみたいで」
「…あぁ…」
「部活に支障きたすなんてな。キャッチとしても先輩としても最悪だよ。投手のモチベーション上げてやんなくちゃなんねーのに、不安にさせちまうなんて」
「…」
「そこでだ」
「ん?」
「もうこういう事がねぇように、お前に愚痴る事にした。全部お前に吐き出してから、次の日の部活に備える」
「…あのさ、準太もだけどお前も大概酷いよな」
「慎吾、マジで辛いんだって」
「あー!分かったよ!いいよ聞いてやるよ。オレも副キャプだからな!準太やお前に影響が出たらチームもオレも困る」
「ありがとな〜慎吾」
「言っとくけど貸しだからな。いつか倍返ししてもらうから」
「分かった。返すよ、何か。覚えてたら」
「おいコラ」





「何か最近、カズさん慎吾さんと良く一緒にいるよな…」
「あぁ〜…そういえばそうかもねェ」
「和さんはオレのキャッチなのに、これじゃ和さんとコミュニケーションとれねーじゃん。つか最近、和さんと練習以外であんまり喋ってない気するし」
「ふ〜ん」
「お前もうちょっと気のある返事返せよ。何だよそのどうでもいいみたいな態度さ」
「だって実際オレにはどうでもイイっていうかさァ。でも別に和サンは準サン専用のキャッチってわけじゃないじゃん。峰サンとか他のピッチの球だって受けんだから」
「…そうだけど。でもオレのが一番多く受けてもらってるし。試合でもオレのが」
「てか、そんなに気になるんだったら言えばいいじゃん。もっとオレの相手してくださいって」
「そんなワガママ言えるわけ無いだろ和さんに。嫉妬してる女じゃあるまいし」
「じゃーどうしようもないじゃん」
「…分かってるよ」

「和己」
「…何」
「準太がこっち見てるぞ」
「…」
「あんまり準太と喋ってねーんじゃねーの?」
「最近、側にいると辛いんだよ。アイツに笑いかけられると、どんどん勘違いしちまいそうになる。もしかしてオレをちょっとは好きでいてくれるんじゃないかって。そんな事無いって分かってるからそんな考え打ち消すけど、でもうっかり期待しちまうんだ。そんで我に返って辛くなる。それの繰り返しだ。完全にドツボにハマっちまってる」



「…」
「あいつが先輩のオレを慕ってくれるのは嬉しいけど、その真っ直ぐな好意が辛い。嬉しいけど辛いんだ」
「…」
「側にいてくれると嬉しい。けど辛くなる」
「…そっか」
「もう練習再開しないとな」
「和己、無理すんなよ」
「おう」
和さん視点が難しいかもしれません。てかこれは面白いのか。