「なー、兄貴」 「あ?何」 「あのさ、この間買ったジーンズ貸してくんねぇ?出来たらちょっと明日はいて行きてーなーと思って」 「は?やだよ何で。つか前にダメだっつったろ」 「…あー」 「じゃあ別にいい、とかお前も言ってたじゃねー…か…。あ、もしかしてお前」 「んだよ」 「マジで好きな女出来たとか?んでハマっちまったとか?」 「…ちげーよ」 「いやいやいや慎吾〜、詳しく聞かせろ」 「やだよ」 「つかさ、そんな見栄張りてぇような相手って、もしかして年上でキレーなお姉さまタイプとか?」 「いや違うし」 「でもお前、逆に背伸びしてる感が出たら超ダセーぞ?程々にしとけ。向こうは年下で可愛いのが気に入ってるかもしれねーだろ」 「別にそういうんじゃねーから」 「…そうだな。ジーンズは貸してやる。ついでにウォレットチェーンとリングもな。でもやりすぎは禁物だから。お前はコウコウセーなんだしよ。上はTシャツが良いな。赤でいいだろ」 「え、良いの?」 バイトしている兄貴だからこそ持ってるジーンズとシルバーアクセだ。結構値段は張る。 「良いよ。でも気をつけろよ。あんまヒザの曲がり癖とかつけんなよ」 こういう所はみみっちい。 「サンキュ」 取り合えず礼を言ってそれら一式を借りる。 「あんまキンチョーとかして下手こくなよ?まぁ年上なら大らか〜に受け止めてくれるかもしれねーけど」 終始、人の話を全く聞いていなかった兄貴の中では、勝手に年上のお姉さまタイプの彼女が出来たという事になってしまっていた。 明日会う相手が和己だと知ったら兄貴は一体どう思うのか。 和己と兄貴は2、3回程度だが顔を合わせた事がある。 『さすが野球部っつうかキャッチャーだな。いいガタイしてんな』等と過去に言っていた。 その和己とデートする弟。兄貴のリアクションは想像も出来ない。 和己と出掛けるという事実に、オレはぶっちゃけ舞い上がっていた。 別に一緒に遊ぶのはこれが初めてじゃない。 でも、一応”付き合っている”という事になった今、オレの中では180度意味が違ってくる。 つまりデートだ。 男同士だろうが何だろうがデートだ。 肝心の和己の方は、これまで二人でつるんで遊びに行った時とそう変わらないみたいな反応だったのが、微妙に不満といえば不満だった。 というかそもそも和己はちゃんとオレと付き合っているという自覚があるのか。 それ以前にオレの事を好きなのか。 いやでも、キス、とかしたわけだし。 最近のオレのなかで、暇が出来るとぐるぐる頭の中を周り始める事柄だった。 いやでもまだ(一応)付き合うことになって1週間経っていないんだから、焦りは禁物だ。 と、自分を宥める一方、好きとも何とも言われてない事実が再び小さな焦りを発生させる。 結局、和己がキスして抱きしめてくれたという出来事を思い返して、一応は収束させるものの、ふとした拍子に同じ事が頭をグルグルするといった繰り返しだった。 何せオレは男だ。奇跡的にというか和己の気まぐれにと言うか、付き合うことをOKされたものの、一体どこまで本気なのかと不安になるのも仕方が無いと思った。 午前中は練習があり、午後に待ち合わせの約束をした。 昨日兄貴に借りた物を着て、髪もワックスでセットする。和己と出かけるのにこんな気合を入れたことは無い。何だか一人でちょっと張り切りすぎたかなと思ったりする。 家を出ようとすると、兄貴がオレの格好を見て声をかけてくる。 「お、良いんじゃね?エセミュージシャン風で」 などと言う。エセって何だよと思ったが、まぁ、良いと言ってるんだから良いんだろう。 待ち合わせ場所には5分前に着いたが、珍しい事に和己が既に待っていた。 コイツは学校や部活なんかに関わる事には真面目だが、イマイチプライベートな所はルーズだ。 というか、オレに対してのみルーズなのか?と過去にちょっと思ったこともある。 「よう」 と、至って普通に声をかけたが、実は微妙に緊張していた。 何でさっきまで普通に練習してた和己と顔を再び合わせたぐらいで緊張してんだオレ!とツッコミを入れずにはいられない。 和己は何やら物珍しげにオレをしげしげと見て、「へぇ〜」等と言っている。 ![]() 「そのデニムのポケットんとこ変わってんな。凝ってるっつーか。高そう」 確かに高い。つうか (オレって、初めてのデートに凄ぇ意気込んで気合入れてきた中坊みたいな?みたいっていうかまんま?うわダセ) と今更ながら恥ずかしさが込み上げてきた。 ![]() 和己は余り気にした風もなく、じゃあ行くか。とあくまでマイペースだ。 「昼メシ喰ったか?」 「え、いや軽く」 「オレ何も喰ってねぇんだよ。マック寄りてぇんだけど」 「あー、良いよ」 分っちゃいたが、これまでの和己との外出と、何ら変わる所のない雰囲気に少々ガッカリしたりもする。 いや、オレを意識して雰囲気を作る和己というのも正直不気味だが、何かちょっとこう、少し変わるところがあってもいいんじゃねーの?とつい思ってしまう。 [ 今回の慎吾について ] ・R.T per Ramdane TouhamiのTシャツ \8,295 ・ロビンス・ジーンのジーンズ \50,400 ・ロイヤルオーダーのウォレットチェーン \136,500 ・テーラーデザイン×ジャム ホーム メイド&レディ メイドのカレッジリング \29,400 ・和己と過ごす時間 プライスレス それがやりたかっただけでした。 慎吾の兄を捏造しましたが、いくらバイトしてるからといって、身につけるものにそこまで金はかけないだろうと思います。 まして高校生が身につけるなんて、明らかにやりすぎです。 ちなみにメンズ雑誌に載ってた格好をほぼそのまま使いました。 ロビンスジーンのジーンズは、女の子のが可愛くてですね。でも高いうえに輸入モノなんですよね。 10/10 ← |