慎吾はモテる。 外見はまぁ、良いんだろう。 女の子には優しいってのもあるんだろうし、話も上手くて面白い。 野球も上手い。 後は、男のオレには良く分からないが、女の子受けする何かを持ってるんだろう。 そんなわけで、慎吾はこれまで結構色々な女の子と付き合ってきた。 だがあまり長続きはしていない。 何が気に入らないのか知らないが、大抵慎吾から振ってしまうのだった。 それで、友人としてはちゃんと長続きするような、本気になれる相手が出来れば良いのにと時折思っていた。 すると、本命はいると慎吾は言う。 なら話は早い。 その子に告白して付き合えば良い。幸い、女の子受けする要素を持っているのだから難しい事ではないだろう。恐らく。 しかし、慎吾は本命については何やらはぐらかした。 告白するような気配も無さそうで、何が一体問題なのかと思う。 詰め寄ってみたが、顔を引きつらせつつも吐く気はないらしく、誤魔化そうとしているのが分かったのでオレは引くことにした。 無理矢理白状させたいわけじゃない。 しかしその後、急展開が待っていた。 寝ている俺に、慎吾がキスしたのだ。 とりあえず起きなかったふりをしたが、さすがにビビッた。 これはどういう事なのかと思った。もしや慎吾の好きな子ってのはオレなのか。しかしオレだ。 オレだとすると色々と符号が合うのだが、いくらなんでもオレはないだろうと思う。 慎吾が付き合ってきた可愛い女の子に比べると、正に正反対も良い所だ。何と言っても男だ。 まさかホモだったのか。いやしかしあれだけの女の子と付き合ってきてそれはないだろう。じゃああれか、両方いけるとかそういうやつか。 分からない。考えても分からない事は、考えない事にし、取り合えず寝ることにした。 ここでホントに眠れるところが自分でも凄いと思う。 そして翌朝、何も無かったかのように振舞ったものの、カマをかける意味も込めて、帰り際に慎吾に本命はオレなのかと聞いてみた。 すると慎吾は明らかに言葉につまり、固まっていた。 ![]() あぁ、マジかこりゃ。 何と言っていいか分からなかった事もあり、固まったままの慎吾をそのままにして、オレは家に帰った。 何故オレなのかがイマイチ分からない、というか全く理解できないが、慎吾の家に泊まった2日間は、慎吾が明らかにおかしかった事は確かだ。 日頃のどうでも良さ気な、余裕のある態度とのギャップもあって面白かった。 ちょっと可愛いなコイツ、と多少思ったりもした。 しかしそうは言っても男だ。しかも親友でクラスメイトで主将と副主将だ。 普通に考えれば無い。どう考えても無い。 だが別にキスされた事に関して、嫌だったとかいうのは特に無かったので、やろうと思えば案外オレはいけるんじゃないだろうかと思ったりもした。 いけるからといって、そっちの道に踏み込むのはまた話が違う気もするが。 ソッチの世界に行ってしまって戻れなくなったりしたらちょっと怖い気もする。 そもそも、オレ自身の気持ちはどうなのかという問題もある。 そこは良く分からない。勿論、友人としては好きだ。高校生活を送る上で結構な期間を一緒に過ごしてきて、楽しいヤツだし、頼りにもなるし、自分との付き合いの上で根は良い奴というのも知っている。 女関係がだらしないのは頂けないが、そこは取り合えず目を瞑るとして。 暫く思い悩んでみたものの、こんな問題は考えても結論なんて出ないという結論に落ち着いた。 大体人を好きになるのに理屈も何も無いだろう。 後は流れに身を任せるというか、そのうち答えが出てくるかもしれないし、と深く考えず気楽に構える事にした。 翌日、慎吾は目にクマを作って登校してきた。眠れなかったようだ。こいつは意外に繊細だ。 オレとは真逆に考えまくっていたに違いない。 昼飯を食べつつ話をしたが、結局自分は良く分からないという事を伝えるに留まった。 慎吾とオレがどういう結果になろうと、友達関係は続けて行けそうな所はちょっと安心した。 部活がいつも通り終了し、殆どの部員が帰った部室内で部誌を書いていると、慎吾が女の子に呼び出されていた。 そんな光景は余り珍しくない。 誰もいなくなった部室に鍵をかけ、帰るべく足を進めると、慎吾と女の子の姿が見えた。 やがて女の子が走り去っていくのを確認して、慎吾に声をかける。 すると何を思ったか、いきなりオレに告白を始めた。 どうやらさっきの子の真似をしてるらしいが、そんな風に半分冗談みたいな調子でしか告白出来ない様は、まるでモテない男子中学生のようだ。 コイツ何でこんな一杯一杯な事になってるんだ。 そんなにオレが好きなのか?そう思うと可愛いような、かわいそうなような気分になり、つい、いいよ等と言ってしまった。 すると、取り合えず等と言い、おずおずと俺の背に手を回してきた。 何だ一体。誰だコイツは。正直、慎吾の皮を被った別人じゃないのかと思ったが、ちょっと可愛いとか思ってしまったのも事実だった。 結局、細かい事は追々考える事にして、取り合えずオレも抱き返してやる事にした。 END というわけで、和さん視点のモノローグでした。慎吾に比べてお気楽思考。 全く会話文を挟まないので、読むのを放棄されたらどうしようみたいな事を心配してみたり。 9/9 ← |