6時半頃にはお互い、腹が空きはじめたので夕飯を食べに行く事にした。
土曜だけあって店内は混んでおり、親子連れも多い。時折、素っ頓狂な子供の声が混じって聞こえてきたりもする。
もうちょっと静かなところが良かったかとも思ったが、和己は全く気にしていないようだった。
メニューを広げて注文を決める。料金に合わせてドリンクからメイン、サラダなど、好きなものを選べる為様々な組み合わせが出来るので、オレは少し迷ったりする。
が、和己はコレとコレとコレ、とさっさと決めてしまった。即断即決。こいつらしい。
腹一杯食べた和己は満足な表情を浮かべていたが、オレはやっぱりちょっと物足りなかった。
リングのお返しとしては。

帰り道、結構美味かったな、なんて言いながらのんびりと道を歩く。
こうやって和己と雑談をしたりして、何でもない平凡な時間が嬉しい。
時期が時期だけに、日が落ちるのが早くなってきていて既に空は薄暗いが、商店街を通るとそれぞれの店の明かりが煌々とついていた。
明日が日曜という事もあって人通りも多く、賑やかだ。
オレは、横を通り縋ろうとした民芸店の店先に、小さな置物があるのが目に入った。
「……」
足を止める。
和己に待っててくれと言い、それを手にとってレジに向かう。
店から出てきたオレは、和己にそれを差し出した。
「やる」
「は?」
「…や、別に意味ねーんだけど。夜メシ代安くついたし。何か、良かったから」
「……?」
良く分からないといった感じの和己は、その場で袋から出し、土人形と書かれた小箱のフタを開けた。
包み紙から覗いたのは、小さなカエルの置物だ。
やっぱり良く分からない。そんな顔をしている。
「何でまたコレなんだ?」
そう言いつつ箱から取り出すと、置物がコロコロと音を立てた。中が空洞になっていて、鈴のような音がする。それをしげしげと眺めていた。
「だから、特に意味ねえって。ウサギの横にでも置いといてくれ」
そう言って、オレは歩き出そうとした。
「…なんか、お前に似てんな」
「…」
オレは、歩き出そうとした足を止めた。
店先に飾ってあったカエルが目に入ったとき、オレは、眠たそうな半開きの目がちょっと自分に似てるかも、と思ったのだ。
300円程度の安いものだったけど、和己が持っててくれたら良いなと思った。
やっぱり乙女化してるのかもしれない。
でも、
「ウサギの横に飾っとくから」
そう言ってくれた和己の言葉が、やっぱり嬉しかった。

和己が、ウサギの横にカエルを置いた。
和己の部屋の中にあって、オレを感じさせる物。
それがこのカエルだ。
じわりと幸せな気分が滲み出てくる。
先週の休みといい、今週といい、なんだか良い事尽くめな気がする。
こう続くと、こんな幸せで大丈夫なのかなんて思ったりもしながら暫くカエルを眺めていたら、背後から抱きしめられた。
慎吾、と思いを込めて名を呼ばれる。
オレは固まった。
こんな時に、こんな風に呼ばれると、オレはもう、それだけで一杯一杯になってしまいそうだった。
再び幸せに浸る慎吾。