次の日の昼、オレは思い切って山ちゃんに相談してみる事にした。
正直、相談相手に山ちゃんというのは色々な不安要素がある。でも真剣に悩んでいる事に関してはマジメに対応してくれる所があるので、この際、と思った。というか単にオレと和己の事を知っているのは山ちゃんだけだから、だったりもする。
4時限が終わった時点で、すぐに山ちゃんのクラスに行く。
突然現れたオレに少し驚いた顔をしていたが、話がある事を伝えると付き合ってくれた。

屋上で、弁当を広げつつ早速本題に入る。
「なぁ…オレって最近さ…その、どうかな」
「どうって?」
「なんかこう…。っていうか、山ちゃんオレの事可愛いとか言ってたし…ど、どう可愛いのかなと」
「え、告白?」
「ちげーよ!!」
即座に否定したが、誤解されても仕方の無い言葉だったかもしれない。でも山ちゃんは和己との事を知っているのに何なんだよと思う。
「あぁビックリした」と表情を変えずに山ちゃんは言うが、オレのが正直ビックリした。
「いや、あのさ、可愛いとか言われて微妙なワケよ。男だし。ひょっとしてオレの男的な…何ていうか、男力的なモンが失われてたらどうしようとか」
「男力って何」
「いや、何か、男ー!って部分だよ。男らしさっていうか。なんかさ、和己にも何回か可愛いとか言われたんだよな…」
「……慎吾、ノロケ?」
「違ぇって!ホラ、オレもしかして気付かねぇ内に乙女化し始めちゃってんじゃねーかとか不安なわけよ」
「そうなんだ」
「そうなんだよ。…で、どうなのかなと」
「慎吾さー、何かトンチンカンな方向に思考が飛んでるよ」
「何だよソレ…」
「和己と付き合いだしてから、やっぱちょっと変わったのかな〜。まぁ、良い意味で可愛いから安心していいよ」
何が良いんだ。良い意味で可愛いってどういう意味だよ。サッパリ分からず尚も問うが、山ちゃんはもう話が終わったとばかりに弁当を食うことに専念し始めた。


昼休みになったら、取り敢えず慎吾を例の裏庭に連れて行こう。そこでディープキスとか色々カマそう、と考えていたにもかかわらず、4時限終了のチャイムが鳴り終わる前に既に慎吾の姿は無かった。
どーなってんだ!
どんな嫌がらせだ?
何で2人になりたいと思うときに限って、いねぇんだよ…!
オレは段々イライラしてきた。
もしかしたら便所かも、と思って待っても帰ってくる気配は皆無だった。
仕方が無いので一人、弁当を食べるもののそろそろ我慢も限界だ。
結局、慎吾は昼休み終了ギリギリまで帰って来なかったので、話すことすら出来なかった。

部活の時間になり、部室で着替えをしつつ、慎吾をまたも振り返る。
慎吾は隣のモトやんに何か話しかけられつつ着替えている。
普段通りのその姿に、少しの苛立ちを感じる。
オレと慎吾は、昨日の部活から殆ど喋ってない。
にも関わらずお前は何とも思わないのか。オレにメロメロだとか言った癖して。
どうしても心の中で愚痴ってしまう。
それにしても、今日こそはと思う。
さすがに昨日に続いて早めに終わらせる事は出来ないが、例え短時間でも部誌を速攻で書き上げて、慎吾に触る。
そう決意し、オレは部室を出た。

が、またもや思惑が外れた。
監督が練習終わりまで居残り、更に練習メニューについて話をする事になってしまった。
こうなってしまうと主将のオレにはどうにも出来ない。重要な事だ。途中までは副主将である慎吾と山ちゃんもいたが、最後はオレだけが残される事になった。
ようやく監督との打ち合わせが終了し、誰もいない部室で部誌を書きつつ、思う。
コレは何だ。何かの呪いか。ロクに慎吾と話すらいない。そして慎吾はその点について気にしてもいない。
というより、何か気を取られる事でもあるのか、妙に考え込んだりしていてその辺の事を、というか下手するとオレ自身の存在すら忘れてるんじゃないかと思ってしまう程だ。
あああクソッ!
慎吾も慎吾だが、どうしてこう…!苛立ちも頂点に達し、ギリギリと歯軋りまでしている始末だった。
主に、和さんが一人でイライラを蓄積。