6:33
『なー和己、花火観に行かね?』
『野郎二人でか?寒くないか?絵面が』
『んな事ねーって。いいじゃん。折角、練習明日休みなんだしさ〜』
『良いけど…』
『でさ、浴衣とか着て来いよ』
『何でだよ。彼女と行くならまだしも、お前と行くのに何でそんな気合入れなきゃいけねーんだ』
『いやお前、クラスの子が言ってたんだけどさ、男の浴衣姿がスゲ良いって。可愛い子が引っかかるかもしんねーじゃん』
『オレは別にいい』
『そういう事言うなよ。なー、持ってんだろ?浴衣。頼むから。アイス奢るから』
『ショボい。子供釣るならまだしも、アイスって何だ』
『えー、利央あたりなら釣れてくれんだけど。つか良いじゃん浴衣着てくるぐらいさ〜。ケチ。ケチ和己』
『分かったよ。良いよ別に』
『よっしゃ。じゃーコンビニに7時半に待ち合わせな』
『おう』

7:13
『もしもし』
『慎吾、やっぱヤメる』
『え、今更何言い出すんだよ。てか何で』
『浴衣着たんだよ。したら妹に爆笑されたんだよ。「お兄ちゃん似合い過ぎ!!ヤバいよ。高校生に見えないよ!」って』
『…まぁほら、今更じゃね?お前がどっかオッサンくさいのは皆認めてるし』
『ケンカ売ってんのか慎吾』
『いやいやいや。でもオレもう家出ちゃったし。浴衣も着ちゃってるし。お前オレ一人浴衣って寂しいだろ。つか一旦約束したんだから守れよ』
『…分かったよ。でも笑うなよ。笑ったら速攻帰るからな』
『大丈夫だって。ある程度予想付いてるから』

7:27
「よう和己。…っ!」
「何だ慎吾。言いたい事があるなら言え」
「いや、別に?何もねぇよ?(やべぇ。予想を上回ってた。どっからどうみてもオッサ…いやいや。落ち着け。折角花火に連れ出したのに笑ったら終わりだ)」
「……」
「んな睨むなよ〜、何もねぇって。お前が思ってるほどじゃねぇって。つか早く行かねぇと始まっちまうだろ?」
「…おう」





8:05
「お、花火始まったな」
「(良かった。取り合えず気にならなくなったらしい。花火に集中してる。悪かった和己。悪気は無かったんだけど、正直お前の妹の言うとおりだ。ある意味似合い過ぎだ。でも予想の範囲外だったんだからしょうがないよな?うん。てかオレ的にはお前とこうしてるのが嬉しいわけで、やっぱり悪気とかそんなの無いから。うん)」
「おい、ちゃんと観てるか?」
「え、あぁ、観てる観てる」
「お前が誘ったんだからちゃんと観ろよな。折角来たんだからよ。オレだけ楽しんでても意味ねぇだろ」
「あ、うん」
「何だ?嫌におとなしいな慎吾。どうかしたか?」
「な…んでもねぇし(つか顔覗きこむなよ。顔近ぇって。赤くなってねぇか?オレ。暗くて良かった…)」
「なら良いけどよ。おっ今のスゲェ」

8:45
「そろそろ終わりか。混まないうちに帰ろうぜ」
「あ…そーだな」
「やっぱ変だな慎吾。口数少ないしよ」
「(しょうがねぇだろ。何か変に意識しちゃったら、上手く喋れなくなったんだよ。何やってんだオレ)」
「この間の準太と逆だな」
「…準太?」
「この間も一緒に帰ったんだけど、変にオーバーリアクションっつーか、普段より妙に喋るしよ。落ち着けっつったんだけど、始終そんな調子でよ。アイツも何かおもしれーヤツだよな。長い付き合いなのにイマイチ分かんねぇ所あるしさ」
「へー。(そりゃどう考えてもお前を意識して挙動不審になってんだよ。不毛だよなぁ…オレもアイツも)」
「ところでもう浴衣来て花火行く気はねぇからな」
「う…。(忘れてたわけじゃなかったのか…)浴衣無しなら良いんだろ?」
「良いけどお前、彼女と行けばいいだろ」
「…いねぇし」
「え、あの可愛い子は?」
「別れたし」
「え、またかよ。お前な〜、大事にしてやってんのかよ」
「関係ねぇし」
「いやそりゃそうだけどさ。でも可愛くて感じ良さそうな子だったじゃねぇか」
「何、ああいうのが好み?」
「いや、俺の話じゃなくてさ」
「でも嫌いじゃねぇんだろ?紹介しても良いけど(って何自虐に走ってんだオレ)」
「いやいいよ」
「…」
「…」
「帰ろうぜ」
「(…何か、ちょっと怒った、か?でも可愛いとか言うからオレもちょっとつっかかるみたいな感じになって、でも…。はぁ、空気重いし、なんか最悪だ)」

8:55
「…慎吾」
「え?…ってオイ!髪の毛かき回すな!」
「お前クセッ気だもんな〜」
「わかっててやるな!」
「重い顔してっからだろ」
「…っ、だって」
「彼女と別れて時間経ってねぇんだろ?簡単に紹介するとか言うなよ」
「……(悪かったな)」
「…」
「実はオレ、本命がいるんだ」
「あ?」
「ソイツを忘れようとして他の子と付き合おうとしたけど、やっぱ無理だった」
「…」
「(あ〜あ、胡散臭いものを見るような、心底あきれた目で見てんな。こんな芝居がかって言ってるからな)」
「で?」
「…実はお前なんだ、和己」
「へぇ〜」
「おいおい、もうちょっとマシなリアクション返そうよ。そこは山ちゃんなら『オレもだよ慎吾!』ってノッてくれるトコだぞ。で、熱い抱擁だ」
「オレは山ちゃんじゃねぇからな」
「つまんねぇよ和己〜(冗談とは言え、オレ的には凄ぇセリフ言ったのに)」
「お前の冗談のがつまんねぇ」
「うわ酷」
「そういやアイス奢ってくれるんだったな。雪見だいふくが食べたい」
「雪見だいふく…顔に似合わず何か可愛いな。チョイスが」
「文句あんのか」
「ウソウソ。和己も可愛いよ」
「嬉しくねぇよ。てかフォローになってねぇよ」
「(…二人でこうやって雑談とかして、それがスゲェ楽しくて嬉しくて、でもコイツには当然友達同士のやり取りな訳で、てかいつまで続くんだろうな。この一人相撲は。もしかして卒業するまでか?辛ぇなオイ)」
「おい急に黙んなよ。そんなに欲しかったか?熱い抱擁が」
「え?(…ってオイッ、う、わ。マジか和己。お前には冗談でもオレ的に…って)イデデデデデデ!痛いって!どんだけ渾身の力込めてんだこの馬鹿力!!」
「あはははははははは!」
「お前はそういうヤツだよな。分かった。雪見だいふくはいらねぇって事で」
「ちょっと待て。お前こんな格好までさせておいて、約束破んのか?」
「いやお前が悪い。オレの純情を弄んだお前が」
「お前に純情とか、ホント似合わないよな」
「そんな至極真面目に言われるとマジで傷つくんだけど」
「お前は少しぐらい傷ついて、今までフッてきた子の気持ちを分かってやるのも良いかもな」
「何でオレがフッたって決めつけんだよ」
「違うのか?」
「…違わねぇよ」
「なぁ、本気で好きな子いねぇのか?」
「…」
「…」
「いる、けど」
「そうか…なら良かった。でもそれならその子だけにしとけよ。んでさっさと告白しちまえ」
「(お前だよバカ。てか出来るもんならさっさとしてるっつーの)」
「ま、オレが口出しする事じゃないかもしれないけどさ」
「…なー、帰りオレん家寄ってかね?コンビニで何か買ってダラダラ過ごそうぜ、たまには」
「そうだな。そこで本命について色々聞かせてもらうか」
「(しまった…!)」
「逃げるなよ」


夏だから浴衣を描こうと思ったんですが、浴衣ってどんなだっけ?とか思いつつ描いたんで適当です。
和サンが凄くオッサン臭くなってしまって、多少直したんですけど、オッサンっぽいっていう会話文をちょっと付け足そうと思ったら予想外の長さになっちゃいました。しかも終わり所が分からなくなってしまったというかオチも見つからずにムダに長くなった挙句終了です…。
ていうか文章書きではないので、色々とアレな所は目を瞑っていただければ。